玉掛けワイヤと台付けワイヤの違い

ワイヤロープスリングとなっている玉掛けワイヤはよく台付ワイヤと混同されますが、台付索は荷縛りなどの使用に限るもので、物の吊り上げには玉掛索を使用します。

区分 使用目的 加工方法 安全率
台付索 荷や物を固定する 法的規定はない 4以上
玉掛索 荷や物を吊上げる 労働安全衛生規則第475条及びクレーン等安全規則第219条で規定。
アイスプライス若しくは圧縮止め又はこれらと同等以上の強さを保持する方法。
アイスプライス:全てのストランドを3回以上丸差し+2回以上半差し(4回以上丸差しの場合は1回以上半差し)
6以上

注)半差しとは、ストランドの素線を上層と下層とに分け、上層素線のみを編む方法。

玉掛索は玉掛作業、台付作業で使用できるのに対して台付索は台付作業にしか使用出来ず玉掛作業には使用出来ない(法規制による)

玉掛け索

玉掛 割差し
JISワイヤロープを使用

玉掛 本カゴ差し
JISワイヤロープを使用

圧縮止(クランプワイヤロープ)
JISワイヤロープを使用

スリムロック
JISワイヤロープ使用

台付け索

台付ワイヤ(巻丸差し)
OUTワイヤロープを使用

台付ワイヤ(カゴ丸差し)
OUTワイヤロープを使用

圧縮止(クランプワイヤロープ)
OUTワイヤロープを使用

スリムロック
OUTワイヤロープ使用

ワイヤロープの両端をアイスプライスする加工方法は、半差しのあるものと、ないものの2種類に大別され、両者の加工部外観は同じように見えても、よく見ると実際は違っております。すなわち半差しのあるものは国の法規によって決められたもので、半差しのないものは法規に制約されないものです。

台付ワイヤについて
台付ワイヤロープもアイスプライス加工(編み込み加工)をしており、玉掛けワイヤロープと外見が良く似ています。台付けワイヤロープを玉掛け作業に使用しないように注意が必要です。
玉掛けワイヤロープと台付けワイヤロープの違いは、加工した後に見えるひげの数(ヵ所)で判断することができます。
台付けワイヤロープは、一般的にストランドを5回差し込みしているだけなので、切断されるときに現れるひげは1ヵ所です。

玉掛けワイヤについて
玉掛けワイヤロープは、ストランドを3回(もしくは4回)編み込み、ストランドを半分に切り落としてから、さらに2回以上(最初に4回編みこんだ場合は1回)編み込みます。そのため、切断した際に現れるひげが2ヵ所出ててきます。
※クレーン等安全規則 第219条

玉掛け索

玉掛け索とは、それ自体により荷を高く吊り上げる目的に使用され、スリングロープ又はスリングワイヤとも呼ばれるもので、その加工方法はクレーン等安全規則第219条及び労働安全衛生規則第475条に定められております。
第219条(リングの具備等)

  1. 事業者は、エンドレスでないワイヤロープ又はつりチエーンについては、その両端はフツク、シヤツクル、リング又はアイを備えているものでなければクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具として使用してはならない。
  2. 前項のアイは、アイスプライス若しくは圧縮どめ又はこれらと同等以上の強さを保持する方法によるものでなければならない。この場合において、アイスプライスは、ワイヤロープのすべてのストランドを3回以上編み込んだ後、それぞれのストランドの素線の半数の素線を切り、残された素線をさらに2回以上(すべてのストランドを4回以上編み込んだ場合には1回以上)編み込むものとする。

第475条(ワイヤロープ及び鎖)
事業者は、エンドレスでないワイヤロープ又は鎖については、その両端にフツク、シヤツクル、リング又はアイを備えているものでなければ、揚貨装置の玉掛けに使用してはならない。

以上の通りで吊り上げる場合に使用するワイヤロープ、すなわち玉掛け索に対しては編み込み回数及びその加工方法が定められております。

台付け索

台付け索とは物体を固定する時に使用されるもので、台付けロープ、台付けワイヤ或るは単に台付けと呼ばれるもので、労働安全衛生規則第499条第4項に次のように定められております。

第499条4項(制動装置等)
サドルブロツク、ガイドブロツク等は、取付け部が受ける荷重により破壊し、又は脱落するおそれのないシヤツクル、台付け索等の取付け具を用いて確実に取り付けること。

玉掛け索と台付け索

  1. 以上の通り、玉掛け索は荷を吊り上げるため、台付け索は物体を固定するためと使用目的が異なり、玉掛け索にはアイスプライスの加工方法が定められておりますが、台付け索には加工方法は規定されておりません。
  2. 外観はワイヤロープの両端をアイスプライスをするため同じように見えます。しかし、正確には玉掛け索は半差しを行うので、差し終わりが細くなっていますが、台付け索はスプライス作業を簡略化し半差しを行わず丸差しのみ行っているので、筒形で正常部との境目に段がついています。
  3. 台付け索は玉掛け索と外観上見分けがつきにくいため、これを平気で玉掛け索に使用されることが多いのが現状です。これは使用中の破損が早く安全上危険な行為でありますので十分注意され、気が付かれたら直ちに使用を中止し、正規の玉掛け索に取り替えるようお願いします。
    また、台付け索といえども半差しを行うのが早期破損の事故を防止し、寿命をのばしますのでできる限り半差しを加工されるよう望みます。

安全率

  1. 玉掛け索はクレーン等安全規則第213条と労働安全衛生規則第条469条及び第500条に6以上と定められています。
  2. 台付け索は労働安全衛生規則第500条に4以上と定められております。この第500条に4以上と定められています。この第500条は伐採作業等における危険の防止について定められたものです。台付け索は林業以外に用いる場合でも安全率は4以上とすべきものと思います。

玉掛け索と台付け索の使用区分が乱れている理由

ワイヤロープの両端をアイスプライスする方法は全然から広く行われており、それは主に林業、鉱業などに需要が集中していたため台付けと呼ばれていましたが、戦後しばらくして建設機械の進歩と起重機の早急な普及により、最近では玉掛け索の方が圧倒的に多くなったものの、外観が似ているため需要家のなかには昔からの呼び名で台付けと呼称され、それ故に使用者の中にも区別を知らない人が多いのではないかと思います。

玉掛索の安全荷重表