ワイヤロープの取扱いについて
以下の項目は、危険の程度によって次の3段階に区分しています。
取り扱いを誤った場合、使用者が死亡、または重傷を負う危険が高いと考えられる場合。 | |
取り扱いを誤った場合、使用者が死亡、または重傷を負う可能性が考えられる場合。 | |
取り扱いを誤った場合、使用者が傷害を負う危険が考えられる場合、及び物的損害のみの発生が考えられる場合。 |
- メーカーなどと相談し、用途や使用方法に適したロープを選定し使用してください。また、使用に際しては製品ラベル等により、ワイヤロープ構成、ワイヤロープ径、破断荷重又は種別を必ず確認して下さい。
- 各種の規格、規則、基準等に従って使用して下さい。
- ワイヤロープを折り曲げたり、結んだりして使用しないで下さい。強度が著しく低下し危険です。
- ワイヤロープ端末は、回転したり、はねたりして反発することがあります。固定してはねに注意して取り扱って下さい。
- ワイヤロープには、ロープグリースが塗布されています。グリースが飛散したり、滑ったりしますので、注意してください。
- 長期在庫ロープや中古のワイヤロープを使用する場合は、ロープの状態をよく点検して安全であることを確かめて使用して下さい。
- 必ず手袋をして取り扱ってください。素手では素線やシージング等で負傷する恐れがあります。
- ワイヤロープは電気溶接作業時等でスパークさせないで下さい。強度が低下し危険です。
- 製品ラベル等により製品質量を確認し、容量がそれ以上のクレーン、ホイスト、フォークリフトなどを使用して下さい。
- トラックなどで現地へ運搬する場合、荷台上では製品に歯止めをし、荷台から降ろすときは、直接地面に落下させないよう、クレーン、フォークリフトなどを使用してください。また、製品の積み重ねはしないで下さい。荷崩れを起こし大変危険です。
- 荷扱い時は、必ず手袋をしてください。素手では木枠のトゲ、ボルト、結束バンド、端止め金具などで負傷する恐れがあります。
- 製品を吊る場合は、適正な冶具や保護具を使用して下さい。直接ロープに吊り具やフォークリフトの爪を当てたりすると、ロープが損傷し、事故の元となります。
- 製品は、地面上を引きずったり、凹凸の所を転がさないでください。
- 木枠(鉄枠)巻製品をてこで移動させる場合は、てこをロープに当てず、木枠(鉄枠)の縁に当てて下さい。
- 製品は、平たんな場所に置き、必ず歯止めをして下さい。物が当たったり、振動などにより転がることがあり大変危険です。
- 製品は積み重ねないでください。荷崩れを起こし大変危険です。
- 出来るだけ屋内(ただし、下記のところは除く)に保管し、やむを得ず屋外に保管する場合は、シートなどを掛けてください。
- 湿気の多い所
- 高温や日の当たる所
- 腐食雰囲気
- 雨、露のかかる所
- ロープが地面から30cm程度離れるように枕木などを敷いて置いて下さい。
- 製品の突起物に注意し、ヘルメット着用にて取り扱ってください。ソケットなど端末金具の付いたものは、周囲から分るように、置き方の工夫や表示をするようにして保管して下さい。
- ロープの構成、より方、径、破断荷重または種別がわかるように保管し、誤って他の物を使用しないようにして下さい。
- 長期在庫ロープや中古のロープを使用する場合は、ロープの状態をよく点検して安全であることを確かめて使用してください。
- ロープを引き出す場合は、ロープのはねに注意してください。反発して危険です。
- 止めてあるロープ端末を外す場合、ロープ端末をよく押さえ、U字釘を金棒等でゆっくり抜いて下さい。ロープ端末が跳ねたり、U字釘が飛んだりして危険です。
- 梱包のバンドやフープをクリッパー等で切断する場合は、切断する両側を押さえてはねないように行ってください。
- 必ず手袋をして作業して下さい。素手では結束バンド、シージング、ロープ端末、ロープ切断面の素線等で怪我をする恐れがあります。
- ロープを引き出す場合は、荷を回転させながら行うようにし、適切なブレーキをかけて下さい。引出しを誤ると、よりの長さが変わったり、キンクになることがあり、トラブルのもとになります。
- 切断個所の両側をシージングし、ロープを固定して切断して下さい。切断中や切断直後に端末がはねることがあり、大変危険です。
- 保護メガネを着用して作業して下さい。特にグラインダーカッターを使用する場合は、火花や切粉の飛散及び切断砥石が割損飛散することもあり、大変危険です。
- 切断残のロープは、端末にシージングを施し、木枠(鉄枠)やコイルに確実に止めてください。端末がはねたり、つまづいたりして危険です。
- 切断したロープ及び切断残のロープには、切断前の製品のラベルと同じ内容のラベルをよく判るように取り付けて下さい。ロープの種類を間違えて使用すると、事故発生の恐れがあります。
- 連結方法には下記のような方法があります。各種の規格、規則、基準に合った方法で行ってください。
- ソケット加工やアイスプライス加工を現地で実施する場合は、正しい方法でロープ加工技能士熟練者が行ってください。
- クリップ止めは、正しい方法で行ってください。重ね継ぎ、異種ロープ、異形ロープのクリップ止めはしないで下さい。
連結方法 | 端末加工の略図 | 標準効率(%) | 備考 |
---|---|---|---|
ソケット止め (合金止め) |
100 | 合金又は亜鉛鋳込み | |
クリップ止め | 75~85 | 増し締めが必要、加工不適当なものの効率は50%以下 | |
コッター止め (くさび止め) |
60~80 | 加工不適当なものの効率は、50%以下 | |
アイスプライス 編み込み |
70~95 | 14mm以下の標準効率 95% 16mm~20mm以下の標準効率 90% 22mm~26mm以下の標準効率 85% 28mm~38mm以下の標準効率 80% 40mm~48mm以下の標準効率 75% 50mm以上の標準効率 70% |
|
圧着止め | 100 | 繊維心ロープの場合は心鋼の入れ替えが必要 | |
アイ圧着止め ロック止め |
95~100 | アルミ素管等をプレス加工 |
フリートライアングル(ドラムへの巻き込み角度)
溝なしドラムの場合は、1.5°以内(クレーン等各構造規格では2°以内)、溝付きドラムの場合は、4°(下図のa)以内にしてください。
ドラム及びシーブと フリートライアングルとの略図 |
フリートライアングル(θ) | |
---|---|---|
θ=1.5° | θ=2.0° | |
L≒W×20 | L≒W×15 | |
L≒WL×40 | L≒WL×30 |
巻き方
平ドラムの場合は、下図のように巻いて下さい。(溝付きドラムの場合は、特に配慮する必要はありません)
ロープより方向 | Zより | Sより | ||
---|---|---|---|---|
ドラムへの入り方 | 上綱 | 下綱 | 上綱 | 下綱 |
巻き方 | ||||
備考 親指・ロープ端末を止める方向 人差し指・ロープが入ってくる方向 |
右手 手の甲が上 |
右手 手の甲が下 |
左手 手の甲が上 |
左手 手の甲が下 |
多層巻きの場合
- 地巻きはロープ破断荷重の2%程度の張力をかけ、固く巻いて下さい。
- クロスオーバー部の長さは、ロープ径の20倍程度にして下さい。
- ドラム溝及び溝ピッチに合わないロープは、使用しないで下さい。
捨巻
クレーン等構造規格では、2巻以上と定められていますが、5巻以上として下さい。
(ロープの破断荷重)÷(ロープにかかる最大荷重)を安全率(安全係数とも言う)といいます。下表の安全率を守って使用してください。
規則 | 用途 | ロープの安全率 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
安全規則 クレーン等 |
玉掛索 | 6以上 | ||
クレーン等 各構造規格 |
巻上索 | クレーン 移動式クレーン |
5以上※ | 安全率の算定には、ロープの自重 (但し、揚程が50mを超える場合)やロープが通る シーブの効率も考慮するように規定されている。 |
デリック 簡易リフト 建設用リフト |
6以上 | |||
エレベーター | 10以上 | |||
ジブ起伏用 横行用 |
クレーン 移動式クレーン |
5以上※ | ||
デリック | 6以上 | |||
ジブ支持用 ジブ伸縮用 旋回用 ブーム支持用 緊張用 カイロープ |
クレーン 移動式クレーン デリック エレベーター 建設用リフト |
4以上※ | ||
ケーブルクレーン(メイン・レール) | 2.7以上 | |||
スタッカークレーン | 9以上 | |||
ゴンドラ 構造規格 |
吊り下げ用 アームの起伏用 – 伸縮用 |
10以上 | ||
上記以外のロープ | 6以上 |
各構造規格で、ロープの種類、クレーンの種類、使い方等によってD/dの最低値が決められています。この値より、できるだけ大きくして使用して下さい。
- シーブの材質は、ロープより若干柔らかいものを使用して下さい。
素線の硬度は、概略次の通りです。
- E種:Hv365 Hs50
- A種:Hv425 Hs58
- G種:Hv395 Hs54
- B種:Hv450 Hs60
- シーブの構造
溝の形状
溝半径≒ロープ公称径×(1.07~)1.10×1/2
ロープ周接触角 120°~130°
溝角 50°~60°
ロープが同一方向んい曲がるよう、片曲げ(U曲げともいう)にして下さい。両曲げ(S曲げともいう)の場合の寿命は、片曲げの場合のおよそ70%~75%と短くなります。
ロープを洗浄する場合は、火気や通気に注意して作業して下さい。
ロープのグリースが少なくなったら、所定のロープグリースを塗布して下さい。
ロープは、断線の有無、摩耗の程度、腐食の程度、グリースの状態、形くずれの有無、ロープ端末部の状況などにつき、外部だけではなく、内部も含めた点検を行って下さい。「クレーン等安全規則」や「日本クレーン協会規格」等法的に決められています。点検不備で不良箇所の発見が遅れ、大事故になった例は多くあります。
項目 | 日常点検 | 定期点検・特別点検 |
---|---|---|
断線 | 〇 | 〇 |
摩擦 | 〇 | 〇 |
腐食 | 〇 | 〇 |
形くずれ | 〇 | 〇 |
電弧又は熱影響 | ― | 〇 |
塗油の状態 | 〇 | 〇 |
端末止め金具(クリップを含む) 及び取付け部 |
〇 | 〇 |
ドラム及びロープ車 | ― | 〇 |
損傷の大きいロープや廃棄基準に達したロープは、使用しないで下さい。ロープの廃棄基準・更新基準は、その業種を管理・監督する各省庁により法的に決められていますので、日常点検の上、早めに取り替えて下さい。
(参考)日本クレーン協会の「ワイヤロープの簡易点検」による断線廃棄基準
- クラウン断線(山切れ)の場合、ロープ径(d)の6倍(約1ピッチ)及び30倍(約5ピッチ)の範囲内の断線を数え、使用されているワイヤロープの構成を確認して、下表の断線数以上あれば廃棄する。
- ニップ断線(谷切れ)の場合、1本でもあれば廃棄する。
ZよいとSよりをペアで使用している場合は、同時に取り替えて下さい。
使用期間が異なると、ロープの伸び量が異なり、荷のバランスが崩れます。
ワイヤロープの構成 | 可視断線数 | |
---|---|---|
点検範囲 | ||
6d | 30d | |
18×7 19×7 | 4 | 8 |
6×Fi(25) | 5 | 10 |
6×WS(26) | 5 | 10 |
6×P・WS(26) | 5 | 10 |
34×7 35×7 | 5 | 10 |
6×Fi(29) | 6 | 11 |
6×WS(31) | 6 | 13 |
6×WS(36) | 7 | 14 |
6×P・WS(36) | 7 | 14 |
6×SeS(37) | 8 | 16 |
6×WS(41) | 9 | 18 |
6×37 | 10 | 19 |
4×F(40)※ | 2 | 4 |
3×F(40) | 2 | 4 |
・IWRCのものも同様に扱う。
※ストランドの素線本数39及び42を含む。