製品の種類と関連規格

ワイヤロープ及びワイヤ製品の製造は特殊な構成、用途のものを除いて一般的には、日本工業規格(JIS)に基づいています。

製品

ワイヤロープ JIS G 3525
異形線ロープ JIS G 3546
ワイヤロープスリング JIS B 8817
PC鋼線及びPC鋼より線 JIS G 3536
亜鉛めっき鋼より線 JIS G 3537
亜鉛めっき鋼線 JIS G 3548
硬鋼線 JIS G 3521
ピアノ線 JIS G 3522
PC硬鋼線 JIS G 3538

線材

軟硬線材 JIS G 3505
硬鋼線材 JIS G 3506
ピアノ線材 JIS G 3502

ロープの構成

材料

ワイヤロープを構成するおもな材料としては、下記のものがあります。

素線の材料
  • 硬鋼線材のSWRH52A~82B
  • ピアノ線材のSWRS62A~82B
  • 特殊な場合、たとえばエレベータ用の素線には、SWRH37~47を使用するケースもあります。
表面処理の材料 亜鉛
心綱の材料 サイザル麻、ジュート麻、マニラ麻、綿糸等の天然繊維とポリプロピレン、ナイロンなどの合成繊維。
ロープグリース 赤ロープグリース、黒ロープグリース、特殊ロープグリース(低温用ロープグリース、高温用ロープグリース、リフト用ロープグリースなど)。

より方とより方向

ロープのより方は特殊なものを除き、普通より(Ordinary Lay)とラングより(Langs Lay)との2種類に大別されます。

  • 普通よりとは、ストランドのより方向とロープのより方向が反対のものをいい、ロープの外側では、素線はロープの軸とほぼ平行になっています。このより方は、素線と外部との接触面が短く、したがって摩耗による影響はいくらか多いのですが、キンクを生じることが少なく取り扱いが容易ですから機械、建設、船舶、水産、その他に広く使用されています。
  • ラングよりとは、ストランドのより方向とロープのより方向が同一のもので、素線と外部との接触面が長く、部分摩耗による損傷が少なく、かつ、柔軟性もすぐれているので寿命が長く、索道、鉱業などに多く使用されています。ただしラングよりは、よりが戻りやすくキンクを生じやすいので使用には、慎重をきさねばなりません。
  • ロープのより方向は、ZおよびSの2種類でこれに普通よりとラングよりとが組み合わされ、普通Zより、普通Sより、ラングZより、ラングSよりの4種類となります。

プレホーム

プレホームドロープ(不反発性ロープ)は、より合わす前に、あらかじめストランドに形付けをしてより合わされたもので、ロープをバンドせずに切断してもよりの戻らぬことが特徴です。プレホームドロープが形付けを行っていないノンプレホームドロープ(反発性ロープ)に比べて寿命が長いことは、ロープ疲労試験によって証明されており、さらに、キンク、形くずれが生じにくいことなど種々の利点が明らかにされています。

特徴

プレホームドロープとノンプレホームドロープとを比較しますと、破断荷重にはなんらの差が無く、しかも下記のような特長があります。

  • ロープをバンドせずに切り放しても、切り口がバラバラにならない。
  • ロープに一番禁物なキンクを生じにくい。
  • ロープの継(スプライス)がしやすい。
  • 柔軟性が大きいので、シーブの径は比較的小さくてもよい。
  • 曲げに対して耐久度が高いので、ロープの寿命が長い。
  • 使用中断線を生じても、素線がほかを傷つけたり、けがをさせるようなことが少ない。

ポストホーム

プレホーム処理のみでは、ストランドの締まり具合、なじみ具合は解決できず、使用当初は軽荷重にして、その後順次荷重を増加して、ロープのなじみをよくする、ならし、(Breaking-in)と呼ばれる方法がとられてきました。
ポストホームドロープは、素線のバランスとなじみが良く、かたくよられた伸びの少ないロープであり、寿命の長い扱いやすいロープです。

特徴

ポストホームドロープは、従来のロープ(プレホームドロープ)の特長をそなえ、さらに、次のような特長をもっています。

  • 曲げやすいから素直にドラムに巻け、キンクを生じにくい。
  • 構造上の伸びが少なく、弾性率が高いので、使用中の伸びが少なく、また伸びが安定しているので、数本のロープを同時に使用する場合、荷重が均一にかかる。
  • 荷重がかかった時とかからない時の径の変化が少なく、圧縮された場合つぶれにくい。
  • 各素線、ストランドがよくなじんでいるから、使用中特定の素線、特定のストランドの凸凹が生じない。
  • 三次曲げ疲労に強いので、曲げ疲労に対し非常になる。

プレテンション

ロープのプレテンション加工は、製作したロープに一定時間、一定張力をかけて保持することにより、ロープのよりを安定させ、また、構造上の伸び、あるいは初期伸びを最小にすることを目的として施されます。

  • 伸びの減少
  • 使用中の径の細りの低減
  • 弾性率の向上
  • 疲労性能の改善

ストランドのより方

ストランドのより方としては、点接触より、線接触より、面接触よりの3種類となります。

  • 点接触より(交差より)。素線の本数が6本または、3本の倍数となっているのが普通です。
    6本の倍数 1+6+12+18+24+30+・・・(6x19、6x37など)
    3本の倍数 3+9+15+21+27+33+・・・(6x24など)
    点接触より(交差より)ロープは、一般ロープとして広く使われてきたものです。
  • 線接触より(平行より)。線接触よりロープの基本形としては、シール形(S)
    フィラー形(Fi)、ウオーリントン形(W)の3種類ですが、これらを組み合わせる
    ことによって次のような複合型が考えられ使用されています。
    ウオーリントンシール形(WS)、シールフィラー形(SFi)、
    シールウオーリントンシール形(SWS)、フィラーシール形(FiS)

その他に下層線を点接触よりとし、中、上層素線を線接触よりにしたストランド構成のものも使用され、セミタイプと呼ばれています。(SeSなど)

ロープの径とよりの長さ

ロープ径の許容差JISによる、ロープ径10mm以上+7・-0% 10mm未満+10・-0%

素線の区分

ロープは、それを構成する素線の公称引張強さによってJIS G3525で下記のように区分されています。

  • E種:1320N/mm² 裸及びメッキ(メッキ後冷間加工を行ったものを含む)
  • G種:1470N/mm² メッキ(メッキ後冷間加工を行ったものを含む)
  • A種:1620N/mm² 裸及びメッキ(メッキ後冷間加工を行ったものを含む)
  • B種:1770N/mm² 裸及びメッキ(メッキ後冷間加工を行ったものを含む)

心の種類

ロープの心としては、繊維と金心とが一般に用いられ特殊目的のものには、合成樹脂の心が用いられます。

繊維心(Fiber Core略号:FC)

繊維心(Fiber Core 略号:FC)は、ロープやストランドの形を保持し、ロープの摩耗や腐食を防ぐためのロープグリースを貯蔵し、使用中に内部からこのグリースを徐々にストランドに供給するとともにロープに柔軟性を与える目的で使用されます。

繊維心 天然繊維 硬質繊維 サイザル
マニラ
軟質繊維 ジュート
綿
合成繊維 ポリプロピレン・ナイロン

合成樹脂心

合成樹脂心は、繊維心の代わりに棒状の合成樹脂(塩化ビニール、ポリプロピレンなど)をロープ心として用いるもので石油やさく井などの耐食性を必要とする場合にもちいられます。

金心

金心は、大きな破断荷重を必要とする場合、伸びの少ないことを必要とする場合、ロープのつぶれを防ぐ必要がある場合、熱の影響を受ける場合に使用されます。

金心 IWRC (Independent Wire Rope Core)
IWSC (Independent Wire Strand Core)
NIWRC (New Independent Wire Rope Core)
ISRC (Independent Sun Rope Core)

ロープグリース

ロープグリースには、大別して、赤ロープグリースと黒ロープグリースがありますが、ロープの使用目的及び使用条件に適応した特殊用途用グリースもあります。

ロープグリース 赤ロープグリース 浸透性大、取扱い容易
黒グリース 粘着性大、耐候性大
特殊ロープグリース 高低温度用、耐ゴム、膨潤用、耐水用、耐酸用ノンスリップ用

交差よりロープ

通常使われている交差よりロープ

呼称 規格 構成記号 主な用途
7本線6より JIS規格品 6x7 リフト支曳索・索道の主索・立抗・斜抗巻上用・立抗掘削ガイド用・底曳用・ステー用
19本線6より JIS規格品 6x19 林業作業索用・立抗巻上用・底曳用・ステー用・ボーリング用・ウインチその他諸機械用
24本線6より JIS規格品 6x24 クレーン等荷役用・玉掛用・定置網・環綱等水産用・係留索・挽索・ウインチ・その他諸機械用
37本線6より JIS規格品 6x37 クレーン等荷役用・玉掛用・係留索・カーゴ等船舶用・リフト・索道の緊張索用・その他諸機械用
61本線6より JIS規格品 6x61 クレーン等荷役用・玉掛用・リフト・索道の緊張索用・その他諸機械用

平行よりロープ

通常使われている交差よりロープ

基本形のシール,ウォーリントン、フィラー、セミシール、ウォーリントンシィール形などがあります。

特徴

  • 各層の素線が線接触している。交差よりロープは、各ストランドの素線が上よりと下よりとでピッチが異なっているため、各層の素線は点接触して交差しているのに対して、このロープは、上よりと下よりとがともに同一のピッチになっているため、各層の素線は線接触しています。
  • 形くずれしにくい。上層素線が下層素線間におさまっているため、ストランドが固く締まり、形くずれを起しにくい性質を有しています。
  • 内部摩耗や疲労断線が少ない。以上のように素線同士が線接触しているため、内部摩耗や2次曲げによる疲労断線が少なくなり、また交差よりロープよりもピッチをつめてよってあるため、曲げ疲労の影響を多く受けるような使用現場では、その特色が発揮されます。
  • 変形しにくい。ストランドが固く締っているため、強い圧力を受けても変形しにくく、応力も均一に分布されます。
  • 破断荷重が高い。交差よりロープよりも断面積が大きいため、高い破断荷重を有しています。

選択

ロープが高熱環境下で使用される場合や小径のドラムで乱巻される場合、又は大きな横圧を受ける場合や伸び嫌う場合などは、ロープ心入り(IWRC)のロープを選ぶ必要があります。

選択基準
交差より 平行より
6×7 6×Fi(17)・6×S(19)
6×19 6×Fi(21)・6×Fi(25)・6×WS(26)
6×24 6×Fi(29)・6×WS(31)・6×SeS(37)
6×37 6×Fi(29)・6×WS(36)・6×WS(41)・6×SeS(37)
構成記号 主な用途
6×S(19) エレベータ用、水産用、索道用
IWRC6×S(19) 石油掘削用
6×S(24) 水産用、電設用
6×W(19) エレベータ用、林業用
IWRC6×W(19) 一般クレーン用
6×Fi(17) ロープウェイ用
6×Fi(21) 林業用、ロープウェイ用
7×Fi(21) 林業用、小型ケーブルクレーン用
6×Fi(25) 一般クレーン用ロープウェイ用
IWRC6×Fi(25) 一般クレーン用
6×Fi(29) 一般クレーン用、索道用
IWRC6×Fi(29) 一般クレーン用、
6×WS(26) 一般クレーン用、索道用
IWRC6×WS(26) 一般クレーン用、
6×WS(31) 一般クレーン用、索道用
IWRC6×WS(31) 一般クレーン用、
6×WS(36) 一般クレーン用、索道用
IWRC6×WS(36) 一般クレーン用
6×WS(41) 一般クレーン用
IWRC6×WS(41) 一般クレーン用

異形線ロープ

ストランドに異形加工(ダイフォーム)を施して、素線同士の接触状態を線接触から面接触に変化させ、そのためストランド表面が平滑になっています。

特徴

  • 破断荷重が高い。
  • 耐疲労性が良い。
  • 対摩耗性が優れている。
  • 形くずれしにくい。
  • ドラム、シーブ、ローラーなどの傷みを少なくする。

エレベータロープ

建築基準法では、その種類、規格が定められています。

6ストランドロープ 丸線 6×S(19)、6×W(19)、6×Fi(25)
8ストランドロープ 丸線 8×S(19)、8×W(18)、8×Fi(25)
異形線 8×P・S(19)、8×P・Fi(25)

フラット形ロープ

フラットンドストランドロープ(FSR)とも呼ばれ、ロープの外周がフラットになるように設計されたストランドから成る。フラット形ロープには、三角ストランドロープ、蛤形ストランドロープ及び平ストランドロープ(オーバルストランドロープ)の3種類があります。

特徴

  • 摩耗がすくない。
  • 破断荷重が大きい。
  • 取扱い上の注意点

非自転性ロープ

荷役機械の高能率化とともに高揚程化され、従来のように1本の巻上索では吊荷が回転して作業に困難をきたすようになり、その解決策としてZよりSよりロープとを並列使用していましたが、更に機械のコンパクト化のため、1本の巻上索でも作業可能な製品の要望に対処して、次のような非自転性ロープを開発して広くご使用いただいています。

シングルロープ

ストランド数を3~4本として、一般の6ストランドロープよりも層心径を小さくし、またよりピッチを加減することによってロープの回転トルクを少なくしたもので、ストランドの断面形状はロープ表面を平滑にするため、多くは蛤形をしています。

多層ストランドロープ

断面形状が円形のストランドを、2層以上互いに反対方向により合わせて、各層間のトルクを相殺するようにしたもので、次の2種類があります。

  1. ヘルクレスロープ 丸ストランド2層をより合わせたもの。
  2. ナフレックスロープ 丸ストランド3層をより合わせたもので破断荷重はヘラクレスロープより高い。

ロープ心入りロープのストランドとロープとのよりピッチを加減することによってロープの回転トルクを少なくしたもので、中楊程のクレーンなどに用います。